2017年9月7日から11日まで、宮城県仙台市で「全国和牛能力共進会宮城大会」が行われた。和牛のオリンピックと言われていて、5年に一度開催されている。
全国の優秀な和牛を5年に一度、一堂に集めて、改良の成果やその優秀性を競う全国大会で、通称「全共」と呼ばれている。
雄牛・雌牛の体型の良さなど、改良成果を月齢別に審査する「種牛の部」と、枝肉の状態で脂肪の入り具合などの肉質を審査する「肉牛の部」に、全国の代表牛約500頭が出品。優秀な成績を収めることで、その和牛ブランドの市場価値が全国的に高まるため、参加道府県にとっては、まさに威信をかけた大会となっている。
和牛の改良の成果を競うだけでなく、開催県にとっては、食、観光、物産、歴史文化などを広く全国へ情報発信できる絶好の機会となり、大きな経済波及効果が見込まれる。
これまで宮崎県が完全勝利による2連覇を達成していて、今回も3連覇に向けて関係者の皆さんは日々頑張ってこられた。
結果は、以下の通り。
【1区(若雄)】(1)鹿児島(2)大分(3)岩手(5)宮崎
【2区(若雌1)】(1)宮城(2)大分(3)鹿児島(5)宮崎(6)宮崎
【3区(若雌2)】(1)鹿児島(2)宮崎(3)大分(6)宮崎
【4区(系統雌牛群)】(1)大分(2)宮崎(3)鹿児島
【5区(繁殖雌牛群)】(1)宮崎(2)鹿児島(3)大分
【6区(高等登録群)】(1)鹿児島(2)宮崎(3)大分
【7区(総合評価群)】(1)宮崎(2)鳥取(3)鹿児島
【8区(若雄後代検定牛群)】(1)宮崎(2)鹿児島(3)山口
【9区(去勢肥育牛)】(1)鹿児島(2)京都(3)宮崎
鹿児島県が4区において1位を獲得。宮崎県は「花の7区」で1位を獲ったものの、鹿児島県に次いで3区で1位。
鹿児島県が総合優勝となる「団体賞」に輝き、3連覇をめざした宮崎県が2位、大分県が3位という結果になった。
マスコミは、「和牛の五輪、鹿児島が日本一に 宮崎は3連覇逃す」(朝日新聞)、「“和牛五輪”九州勢独占、大分・宮崎両県が最高賞、総合1位は鹿児島」(産経新聞)、「鹿児島和牛、日本一 4部門で1位 宮城全共」(南日本新聞)と報道している。
しかし、宮崎県の地元紙でも「宮崎牛日本一」という号外が出された。
鹿児島県が宮崎県の連覇を阻み、文字通りに「日本一」になったのだが、宮崎県は負け惜しみなのか?ということなのだろうか。
これは、「全国和牛能力共進会」のことを理解していないと分からないことなのである。
各部門の最高賞である内閣総理大臣賞を受賞すると、「日本一」を名乗ることができるのである。
宮崎県は、8区で肉牛の部の最高賞・内閣総理大臣賞を受賞した。種牛の部は大分県が受賞したため、宮崎県も「日本一」を名乗ることができる。
種牛は、大分県が「日本一」。
肉牛は、宮崎県が「日本一」。
総合で、鹿児島県が「日本一」。
実にややっこしい。
日本一が3つ存在する、ということなのだ。
宮崎県は3大会連続で内閣総理大臣賞を受賞し、内閣総理大臣賞「3連覇」ということなのだ。完全優勝という意味での3連覇ではないようだ。
しかも、今大会で優勝すると2020年の東京オリンピック&パラリンピックで「日本一の和牛」を名乗ることができる。
そして、知事なりに、何をもって「日本一3連覇」と言えるのかを説明している。
以下、その一部抜粋である。
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○ 種牛部門(1〜7区)と肉牛部門(8、9区)ごとに、優等首席を取った牛の中から最も優れたものに最高賞として与えられる内閣総理大臣賞について、3大会連続で受賞しているのは本県のみ。
ちなみに、鳥取全共では種牛と肉牛を独占し、長崎全共では種牛のみ、宮城全共では肉牛のみ。
○ これで内閣総理大臣賞を4回受賞したことになりますが、これは全国最多となります。
(ちなみに、総合得点による団体賞が設けられたのは鳥取全共以降ですので、それまでは、この内閣総理大臣賞こそが最高賞でした。鳥取以降の団体賞を獲得した県は、順に宮崎、宮崎、鹿児島となります。しかも、今回、鹿児島県とは僅差のようなのですが、公表数字ではないので、ここでは控えます。)
○ 今回、第5区(繁殖雌牛群)で優等首席を取った4頭セットのうちの1頭、「とみの3」号(写真左上)は、長崎全共の第2区で優等首席を取っています。つまり、牛として全共2連覇!を果たしているわけで、史上初とのこと。娘のときに日本一を取り、今度は母として日本一ということになります。凄い!
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さて、宮崎牛がこのような高い評価を受けたことはとても良いことなのだが、イマイチ分かりにくいことには変わりはない。
報道は分かりにくさをどこまで分かりやすく報道していたのだろうか?
地元紙、宮崎日日新聞社の号外を読む限りでは、分かりやすいとは言えないだろう。読者がよく知っているようなスポーツでの優勝なら分かるが、「全国和牛能力共進会」という大会を一般人がどれぐらい理解しているか、ということである。
この「全国和牛能力共進会」に、多くの関係者が関わり、3連覇を目指してがんばってきたわけなので、分かりやすくレクチャーするというのも報道機関の役目ではないのだろうか。
結果ありきの報道になっているのではないだろうか。
確認するが、
鹿児島県が何と言っても日本一
宮崎県は、肉牛で日本一
大分県は、種牛で日本一
ということ。
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