国境なき医師団日本
環太平洋パートナーシップ(TPP)協定の知的財産条項に関する非公開の交渉会合が今日から東京で開かれるにあたり、国境なき医師団(MSF)は、日本やその他の交渉参加国に対し、米国が提案している規定を拒否するよう求めている。 それらの規定が安価な医薬品の入手機会やジェネリック薬品の市場競争を妨げ、各国政府が公衆衛生の利益のための法律を制定させる能力を制約する恐れがあるためだ。 <懸念される「エバーグリーニング」>
MSF日本会長の黒崎伸子は、 「アジアや途上国の数百万の人びとが必要とする救命治療機会を確保するには、安価なジェネリック薬は極めて重要です。米国の提案は、HIV/エイズ、結核、マラリアといった病気の治療のために苦労して築かれたこれまでの進歩をないがしろにし、他の多くの病気への対応をより困難にするものです。TPP交渉が重大な最終局面を迎える中、各国交渉官は米国からの圧力に屈さないよう努めるべきです」 と述べている。 交渉は、市民の目に触れる機会もないまま秘密に行われているが、漏えい文書によると、米国は今までの貿易協定案にあったもののなかでも最も有害な知的財産条項を推している。 米国が提案するいくつかの条項の中で最も懸念されるのが、「エバーグリーニング」という手法を助長している点だ。 これは、例えば製薬会社が既存薬について複数の二次的特許を取得することで、当初の20年間の特許有効期間を超えた医薬品の独占保護の延長を可能にし、ジェネリック版の製造を場合によっては無期限に遅らせるものである。 <交渉国は地域の公衆衛生を最優先に> 年内の交渉妥結が迫られる中、当初提案に対し厳しい反発を受けた米国政府は、交渉参加国のいくつかの最貧国を、一時的、そして限定的に一部の知的財産関連条項の対象外にするという特例扱いを提案するとみられている。 しかし、それらの国も、すでに安価な医薬品の供給を圧迫している国際貿易法の条件よりもはるかに厳しい今回の知的財産関連条項の適用は免れない。 さらに、特例の対象外の国では、必要とする医薬品の価格が数百万人の貧困層の手に届かないほど高額になるという状況に直面すると見られる。 MSF日本の必須医薬品キャンペーン渉外担当、ブライアン・デイビスは、 「今回の米国の提案により、革新を制限し安価な医薬品の入手機会を妨げる、厳しい知的財産規定が課されることになります。日本やその他の交渉参加国は、地域の公衆衛生を優先させ、医薬品の入手機会を取引の材料にしようという米国からの圧力に抵抗するべきです」 と話す。
by PRTIMES
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