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国際問題に「仏教的アプローチ」から迫る◆日、韓、米、独、英、スリランカの仏教・哲学学者による国際シンポジウムを日韓の大学が共催





国立大学法人 埼玉大学



 国際問題に「仏教的アプローチ」から迫る◆日、韓、米、独、英、スリランカの仏教・哲学学者による国際シンポジウムを日韓の大学が共催

教思想の本質を再考、その国際関係にもたらす影響、そして平和構築に向けたキーアクターとして 担うべき役割について、日、韓、米、独、英、スリランカの仏教・哲学学者がディスカッション
…………………………………………………

 国立大学法人 埼玉大学(学長:上井喜彦)は、グローバル人材育成の観点から、韓国の東国大学校との共催(後援:埼玉県)で、2013年1月22日(火)~23日(水)の2日間に渡り、埼玉大学および埼玉県・浦和ロイヤルパインズホテルにて、韓国、アメリカ、ドイツ、イギリス、スリランカの仏教学者を招聘し、国際シンポジウム「Tradition and Modernity -Thinking Asia across Frontiers- (邦題:伝統と現代 -国境を越えてアジアを考える-)」を実施、日本を取り巻く東アジアの政治環境が厳しいこの時期に、日韓の大学が協働し、“国際問題解決の仏教思想による寄与”という、ユニークなアプローチで行うシンポジウムとなりました。




■仏教をはじめとした宗教思想哲学の視点から国際関係を見つめなおすことで日本のこれからの在り方を考える

 東日本大震災、歴史認識や領土問題に絡んだ各国間の緊張など、いま日本を取り巻くアジアでは、様々な問題が起きています。こうした現況に対して、「仏教思想ができることは何か」というテーマを掲げ、韓国、アメリカ、ドイツ、イギリス、そしてスリランカの主要大学から著名な仏教・哲学学者を招聘、その多様な英知により、問題解決に仏教思想的アプローチが果たせる役割について考えていくことを目的とした本シンポジウム。

 1日目は、仏教をはじめとした宗教が他国にもたらされたとき、その国に文化的政治的にどのような影響を及ぼすのか、ということについて、埼玉大学にて、招聘教授および埼玉大学教授による非公開の学術会議が行われました。

 仏教、さらには儒教的倫理や東洋哲学など、宗教を思想と捉えた幅広い発表に続き行われたパネルディスカッションでは、思想という新しいアイディアがもたらされたときにそれを自国に適応させるためにどうトランスフォームしていくべきなのか、それがどう政治に影響していくのか、仏教が持つユニバースな世界観をもってどう国際関係を前進させていくのか、という議論が活発に行われました。

 日本は様々な方法でアジアに貢献してきたにも関わらず、それが必ずしもアジア各国において恩恵として迎え入れられていないのは、生活に根を下ろした形での思想哲学が乏しいことにあるのではないか、仏教や東洋哲学といった視点で国際関係を見つめなおすことで、アジアの中における日本の在り方を考えるきっかけになるのではないか、という意見も出ました。


■グローバル化を重大政策とする埼玉県から副知事も参加、韓国の大学から埼玉大学に貴重な経典贈呈も

 2日目は、1日目の議論をベースに、一般公開型のシンポジウムを埼玉浦和ロイヤルパインズにて開催、仏教思想や国際関係を学ぶ学生や埼玉県を中心とした一般市民など、約100人の聴衆者が集まりました。

 開催に先立って行われたセレモニーでは、埼玉大学 上井学長、中央僧家大学の教授にして韓国仏教界の第一人者であるチャン・ドック僧正による開会の挨拶、埼玉県 塩川副知事による歓迎の挨拶に続き、チャン・ドック僧正より埼玉大学に対し、韓国の仏教系譜を現代韓国語および英語で編纂した貴重な経典の贈呈式が行われました。

 この経典は、韓国仏教を世界に広めるためにチャン・ドック僧正によって編纂されたもので、今回初めて、海外の大学に寄贈されました。経典の寄贈を受けた埼玉大学 上井学長は、“仏教の日本伝来は韓国を経由してなされたことから鑑みても、この経典を韓国から日本にいただくということは大変貴重なこと、仏教研究はもとより、グローバル人材育成のために活用するのが埼玉大学の使命である”とコメントをしました。


■仏教の政治的役割は重要課題、仏教を国際秩序構築のキーアクターとして位置づけるためにさらなる議論が必要


 セレモニーに続いて行われたシンポジウムでは、平和主義宗教と捉えられている仏教が歴史的に持ってきた好戦性や暴力という現実と理想との矛盾、またサミュエル・ハンティントンによる「世界を、宗教をベースとした文明圏で色分けする」という捉え方の限界、仏教そのものがはらむ多様性、アジア諸国における仏教の扱い方の違いや宗派間の抗争など、仏教を国際秩序構築のキーアクターとして位置づけるためにはまだまだ議論が必要である、という問題提起が、キリスト教が長い歴史をかけて政治的な役割を明確に提示してきたこととの比較も含めながら、主に欧米の教授から出されました。

 一方で、日韓含むアジアの参加者からは、仏教をはじめとした思想哲学が、現実的な問題をカモフラージュするため、あるいはある一定の行動を促すためのプロパガンダとして使用されることに対する警鐘、密教の盲目的信仰傾向の真偽や密教と権力の関係について、イスラム教やキリスト教といった一神教とは違う自分と他者を区別することのない仏教ならではの普遍的道徳観による多宗教・多文化社会への対応など、時にはジョン・レノンのイマジンの仏教的読み解きなども交えながら、提案がなされました。

 グローバル化が進む現代においては、多様性を内包した仏教だからこその可能性があり、そのためにも一極化した考え方ではなく、多様性自体にどう向き合うか、どう捉えるのかに対する私たちの態度を改めることがまず何よりも重要、という意見も出ました。国際関係や政治的役割という文脈における仏教の在り方については、時間をかけた議論が今後も必要としながらも、たとえ積極的に社会活動に関わらなかったとしても、社会で起こっていることを客観的に観る感受性に富んだ「観察者」になることはできる、という見解も示されました。


 なお、招聘教授は、シンポジウム開催での問題提起、議論を踏まえ、24日・25日には、東日本大震災で大きな被害を受けた地域の1つである陸前高田市を訪問、仏教を学ぶ立場として、被害にあわれた方々への「鎮魂の祈り」を捧げるとともに、本テーマについての議論を深めていく予定です。


【国際シンポジウム概要】  
<タイトル>
Tradition and Modernity -Thinking Asia across Frontiers- 
(邦題:伝統と現代 -国境を越えてアジアを考える-)

<主催>
国立大学法人埼玉大学(日本)
東国大学校(韓国)

<後援>
埼玉県

<開催内容>
*それぞれ招聘教授によるプレゼンテーション・パネルディスカッションを実施

2013年1月22日(火) 14:30~19:00 埼玉大学
●テーマ1. "Japan’s Encounter with Foreign Culture"(「日本にもたらされた外国文化とその影響」)
●テーマ2. "Japan Culture and East Asian Society"(「日本文化と東アジアの社会」)

2013年1月23日(水) 10:00~14:30 浦和ロイヤルパインズホテル
●埼玉大学 学長挨拶、東国大学校 代表挨拶、副知事挨拶、東国大学校から埼玉大学への経典贈呈
●テーマ3. "The Role of Buddhism in International Affairs"(「国際問題における仏教の役割」)
●テーマ4. "Conflict and Reconciliation from Buddhist Perspectives"(「紛争と和解、仏教思想からの視点」)

<参加者>*敬称略
●日本 埼玉大学
上井喜彦(学長)、加藤泰建(副学長)、山口宏樹(副学長)、伊藤博昭(教養学部長)、井上智勝、権 純哲、高橋克也、中村大介、永田雅啓、加藤 基、アクセル・カーペンシュタイン

●韓国
東国大学校 Hwang,, Soonil、Bayer, Achim、Heo, Namkyol
中央僧家大学 Ven. Chondduk、Ven. Mooyeon、Ven. Popjin、Ven. Wonje
学校法人除羅伐 Kim, Seongae

●アメリカ
ルーサー・カレッジ Kopf, Gereon

●ドイツ
ハンブルグ大学 Zimmermann, Michael
ミュンヘン大学 Doewll, Steffen

●イギリス
ロンドン大学ゴールドスミス・カレッジ Keown, Damien
カンブリア大学 Harris, Ian

●スリランカ
コロンボ大学 Asanga Tilakaratne


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