過去には、新聞が報じなかったことがいろいろとあったようだ。
新聞が報じたことは、記事『【宮崎県日向市発】土地所有者による「通行止め」に隠された過去の闇④~10年前に発覚した伊勢の郷不正経営事件~』をお読みいただきたい。
改めて言うまでもなく、現在の社会福祉法人博陽会及び特別養護老人ホーム伊勢の郷には、何ら問題は起きていない。7人目の理事長である金丸喜輝氏以下理事、職員によって、健全な運営が行われている。
すべての問題は、過去に起きたことである。
すべては過去に起きたことを反省もせず、凝りもなく自分の主義主張を繰り返す創設者と名乗る人物によって引き起こされていることである。
その過去を振り返ってみたい。
〇業務改善命令
平成22年2月17日付け『平成21年度社会福祉施設等指導監査の結果について(通知)』に対して、当時の理事長が同年12月9日付けで、『業務改善報告書』を宮崎県福祉保健部長に提出している。
宮崎県からの改善命令は、
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①施設への進入路に係る権原の整理について
特別養護老人ホーム伊勢の郷への進入路敷地の権原を整理し、基本財産とすることが未だ改善されていない。
未だに基本財産に移行できない原因を明らかにし、速やかな改善措置を行うこと。
②特別養護老人ホーム伊勢の郷の仮差し押さえについて
有限会社エムウエルひゅうがと有限会社モルフォとの不動産売買契約に関連し、当事者外の貴法人が理事会審議を経ず手付金返却に関する確約書に連署して連帯債務を行い、このため上記建物が仮差押されている。
このような不正行為に関与した者の責任を明確にするとともに、仮差押の状況を改善すべく早急に対応すること。
③東芝ファイナンス株式会社からの融資について
2億円の融資を受けて簿外口座で管理され、その後、その一部の5千万円が法人管理口座に振返られる等借入金が5千万円あるかのような不正経理がされている。
また、この借入金について裁判上の和解が成立しているが、和解条項違反のため、介護報酬の差押等の強制執行が懸念されるなど改善を要する。
なお、この融資及び裁判上の和解についての理事会での審議が確認できない。
このような不正行為に関与した者の責任を明確にするとともに、資金使途について疎明資料を添付して、報告すること。
④運用財産の無断売却について
日本郵政公社から譲り受けた土地、共同住宅を、理事会承認を経ず1千8百万円で売却されている。
このような不正行為に関与した者の責任を明確にするとともに、資金使途について疎明資料を添付し、報告すること。
⑤日向農業協同組合からの借入金について
ひむかの郷施設長K氏(松本氏の長男)所有の土地を共同担保として理事会の承認を経ることなく3千万円の融資を受け、簿外口座で管理している。
このような不正行為に関与した者の責任を明確にするとともに、資金使途について疎明資料を添付し、報告すること。
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である。
改善命令5項目中3項目が、『カネ』に関するものである。
社会福祉法人を食いものにしてきた、ということか。
いずれにせよ、宮崎県の指摘は厳しいものだが、なぜ、これが刑事告発にまで至らなかったのか、県の対応も不思議である。
これら5項目に関して、当時の理事長が平成22年12月9日付けで、『業務改善報告書』を提出している。
項目①の伊勢の郷への進入路の件、これは現在問題となっている西側取付道路における進入路ではなく、施設近くの進入路のことである。
報告書のとおり、この施設近くの無償貸借契約を締結していている。
項目②については、前回の記事でもご紹介した通りである。仮差押は免れたのだが、理事会をないがしろにする実態が見えてくる。
伊勢の郷の建物仮差押は、有限会社モルフォと有限会社エムウエルひゅうがとの確約書に、当時の江藤紀美子(松本氏の姉)理事長及び松本弘志前理事が、理事会審議を経ることなく、当法人を連帯債務者として連署していたことに起因していた。
受領されていた手付金3千万円のうち2千万円については、東芝ファイナンスとの和解条件として支払われていた。
残り1千万円のうち2百万円はひむかの郷の運営資金に、5百万円はJA日向支店への支払などに充てられていたが、詳細は確認できていないとのこと。
業務改善報告であるにもかかわらず、詳細を確認できなかったとは情けない話である。
さて、項目③だが、平成16(2004)年11月5日付けで、社会福祉法人良純会を借主とする東芝ファイナンス株式会社に対する2億円の借入があり、江藤紀美子理事長(当時)が連帯保証人となっていた。
この借入金は、法人の会計上には現れない簿外口座で管理されていた。
借入金の使途は、特定施設入所者生活介護事業等の建設・設備資金となっていたが、特定施設入所者介護事業(介護付き有料老人ホームひむかの郷)の平成17(2005)年4月12日付けの社会福祉法人定款変更認可申請書に添付された資金計画では、東芝ファイナンス株式会社から5千万円の融資を受ける計画であった。
なぜに金額が増えたのだろうか?
借入金の一部の5千万円のみが法人の介護付き有料老人ホームひむかの郷の財産として管理している口座に資金振替を行っている(同年8月5日)。
これは、当初の事業計画であった東芝ファイナンス株式会社からの融資額が5千万円であったかのように不正に会計処理を行ったのである。
1億5千万円は、どこに消えたのだろうか?
この5千万円は、ひむかの郷の運営資金に充てられたようだが、借入金の返済に対する資金繰りが悪化して返済が滞り、東芝ファイナンス株式会社が訴訟をおこした(平成19年11月29日)。
平成21(2009)年、2月27日、法人と東芝ファイナンス株式会社との間で和解が成立。
その和解条項として、有限会社モルフォとの土地売買契約及び覚書契約による手付金の3千万円の一部の2千万円を返済した。
しかし、実際の借入金は2億円である。2億円の償還予定表とは別に、この5千万円に対する償還予定表があること自体に疑問を持ちながらも、業務改善報告書には具体的には触れていなかった。
その1億5千万円の使途だが、松本弘志前理事に確認したところ、伊勢の郷への進入路(西側取付道路)の造成・整備・舗装工事の費用の支払いに充当したようだ。
8月1日の松本氏へのインタビューでは、この進入路(西側取付道路)の工事は、すべて自分が費用を支払ったということを話していたが、嘘だったということだろうか。
しかし、この1億5千万円の工事費用に関しても、不透明な部分が業務改善報告書で指摘されている。
工事内容及び金額を証明できる書類の確認を行うことができなかったとのこと。
項目④については、当時の報告書では、不当なことに使用した事実は確認できず、当面の法人の運転資金として使用していたとしている。
項目⑤の日向農業協同組合からの借入金の3千万円は、これも簿外口座で管理されていた。
平成19(2007)年1月30日に入金された借入金の一部2千1百万円について、同年1月30日と2月13日、2月15日に、会計元帳には計上のない出入金が行われており、使途については不明。
残りの9百万円については、同年9月10日に、日向農業協同組合から江藤紀美子理事長(当時)の個人口座へ資金振替されていた。
この資金が個人的に何に使われたのかは、この業務改善報告書には書かれていない。
取材の段階で様々な資料を集めたが、江藤紀美子理事長(当時)、松本弘志氏が謝罪したと書かれた文書を見たことがない。
この業務改善報告書の終わりには、
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そこで、法人としては、江藤紀美子氏及び松本弘志氏両名の理事職辞職を求め、両名は既に理事職を辞任しているものであるが、なお且つ、今までの不正行為に対し、江藤紀美子前理事長には、当法人に対する貸付金(実質的に当法人の事業運営に係る借入金で同氏が返済している金額 債権\51,934,351)の放棄を求める。
これまでの述べてきたとおり、江藤紀美子前理事長及び松本弘志前理事の両名は、当法人の理事として果たすべき職責からみて、松本弘志前理事については、損害金もしくは、施設への進入路に係る土地及び駐車場としている土地の無償貸借(譲渡)を求めることとする。
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としている。
業務改善に関することは、これで終わりではない。
平成22(2010)年12月28日付けで、宮崎県福祉保健部長名で『業務改善報告書に係る再調査等について(通知)』が、社会福祉法人良純会(当時)に届いた。
宮崎県は、まだ改善が図られていないと判断したのだ。
当時の社会福祉法人良純会は、平成23(2011)年1月31日付けで、宮崎県福祉保健部長宛てに、現在も調査及び交渉等を行っているので、期限の延長を求める文書を送付している。
当時の混乱ぶりが伺える。
このような混乱を引き起こした本人たちが、謝罪したというような証拠、証言は出てこない。
過去の問題にケリを付けずに今回の通行止め騒動を起こしていることは明白である。誰もが告発、告訴できないのか、と思ったかもしれない。
が、過去に松本氏等が刑事告訴されたことがあった。
〇有料老人ホームひむかの郷会計からの無断引き出しで刑事告訴
平成23(2011)年4月から平成24(2012)年4月にかけて、正規の会計手続きがなされずに、有料老人ホームひむかの郷の会計から、前後18回にわたり宮崎銀行日向支店において、同施設の預金通帳及び銀行届出印が用いられて、合計1,500万円が引き出された。
現在、特別養護老人ホーム伊勢の郷及び介護付き有料老人ホームひむかの郷では、預金通帳の銀行届出印は指紋認証式の金庫で管理されていて、当時、その金庫を開けることができたのは理事長と両施設の施設長の3名だけである。
1,500万円が引き出された当時は、指紋認証式の金庫を導入する前で、当時ひむかの郷の施設長であったK氏(松本氏の長男)の在任中に行われていた。
当時の理事会は、弁護士と協議の上、平成24(2012)年9月20日、K氏及び松本弘志氏に対して、業務上横領罪として、刑事告訴を行った。
平成25(2013)年9月30日、松本弘志氏他3名との和解が成立し、その和解条項の中で、業務上横領の対象となった1,500万円が返還されたことで、刑事告訴を取り下げることが理事会で決定した。
この1,500万円を何に使おうとしたのかは分からないが、よほどカネに困っていた、ということだろうか。
〇和解金として2億円が入る
その後、松本氏は伊勢の郷への進入路(西側取付道路)に関して、今回の通行止めにつながるような活動を展開するようになった。
以前の取材の中で、摩訶不思議なことを松本氏が話していた。
「今回の和解金として、2億円が入ることになっている」
今回とは、先ほども述べたように伊勢の郷への進入路(西側取付道路)のことである。
現場にも複数個所に『和解勧告』『和解調書』が貼られているが、すでに、和解しているのである。
伊勢の郷の現理事長である金丸喜輝氏側からは、前回の記事でも紹介したが、『株式会社MERKYと通行利用料を決めて契約する』または『仮登記の権利一切を150万円で買い取る』の選択肢を提示しているのだが、松本氏側は逆に訳の分からない『合意書(案)』を提示している。
事実上、交渉はストップしている状況で、松本氏は往来妨害をしながら、裏で和解金2億円が入ることになっているようである。
和解金ということであれば、金丸氏が払うことになるが、当然、金丸氏はそのようなことは聞いていないと話す。
松本氏によると、
「この伊勢の郷に興味関心を持った人物から、裏を通じて支払われる」
とのこと。訳が分からない。
これまでは運よく、刑事告訴から免れたかもしれないが、現在行っている往来妨害は、今すぐにでもをやめたほうが良いのではないだろうか。
しかも、日向市が管理している市道にまで対象を拡げている。
昔取った杵柄が、今でも通用することはない。
「世のため、人のため、社会福祉にこれからも携わっていきたい」と私に話した言葉が嘘でないのであれば、他人に迷惑をかけるような行為は、今すぐにでもやめるべきである。
往来妨害をやめることで、見えてくるものがあるのではないだろうか。
今後も取材を続けていく。
(つづく)
【取材につきまして】
現在、宮崎県では、新型コロナウイルスに関する感染拡大緊急警報が発令されています。取材に当たっては、マスクを付け、取材対象者との距離をとるなどの感染拡大防止を行っています。
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