学校現場で「職業体験学習」が行われるようになって、だいぶ年月が経ちますが、果たして、従来とおりの職業体験学習でいいのでしょうか?
就職活動を行う高校・大学において、学生と企業のミスマッチングにより、就職後数年で離職する若者が多い。そこで、もっと早い時期から職業体験をさせることで、子どもたちに働くことに大切さ、自分がどの分野の職業に就けば良いのかを考えるきっかけにしたい、
というのが、学校側、教育委員会側の思惑だと思いますが、果たして、それだけでいいのでしょうか?
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インターネットを見てください。
アフィリエイトやYouTubeの動画、ネット内職等で収益を上げ、中にはYouTubeの動画だけで生計を立てている「YouTuber」と呼ばれる人もいます。
アメリカでは、ハリウッド俳優よりもこのYouTuberにあこがれている10代の若者が多いそうです。
日本でも、テレビのコンテスト番組がきっかけで、YouTubeに動画を投稿したところ、若者を中心にファンが殺到し、YouTubeだけで生計を立てている人がいます。
当然、彼にあこがれ、彼の真似をしてYouTubeに動画をアップロードしている日本の若者もいます。
何事も、最初は他人の真似事で、そのようなことを通じて自分なりのノウハウを高めていけるわけで、中には、自分の才能のなさから脱落していく若者もいることでしょう。
最後に残るのが、次の日本のデジタルコンテンツ産業を支えるクリエイターになっていくのではないかと思われます。
しかし、
その過程において、大切なことがあるのです。
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学校の職業体験学習やインターネットでは体験できない、「職業倫理」に関する問題です。
若者も利用する「Yahoo!知恵袋」を見ますと、次のような質問に出会います。
・YouTubeにある好きな歌手の動画をダウンロードしたいのですが、どうすればいいでしょうか?
若者はお金がない、できればタダで好きな歌手の音楽や動画を手に入れたい。
若者だけではなく、大人でも、「できればタダで手に入れたい」と考えるでしょう。
しかし、歌手は歌をうたうことで仕事をしています。歌うことで収入を得ています。
アニメや映画のクリエイターも、自分の作品を映画館で観てもらうことで収入を得ています。
「お金を払ってモノを購入する」という基本的な経済の考え方が、なぜかインターネットにおいては希薄になってしまうのです。
コンビニやレコード店で、自分が気に入った商品をお金を払わず持って帰ると、当然「万引き」で警察に捕まります。
インターネット上で歌手やクリエイターの作品を黙ってダウンロードすることは悪いことだという意識が低く、ダウンロードできるならダウンロードしたいという心理が働いてしまいます。
なぜ、意識が違うのか?
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学校現場における「著作権教育」「職業教育」が十分に行われていないことによるでしょう。
・好きな歌手の楽曲すべてには著作権が存在する。
・好きな歌手が歌うまでに、作詞家、作曲家、アレンジャー、レコード会社など、様々な人が動き、そういった人々の仕事によって、曲が生まれている。
・作詞家、作曲家、アレンジャー、レコード会社の皆さんは、楽曲を生み出すために働いている。
・そういった苦労の末に生まれた曲を、無断でダウンロードすることは、作詞家、作曲家、アレンジャー、レコード会社の皆さんの収入の機会を奪うことになる。
このような「著作権」「職業倫理」を、学校現場では十分に教えているのでしょうか?
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そういった基本的なことを教えもせずに、ただ単にプログラム通りに「職業体験学習」を行なっても、何の意味もないかと思われます。
今の若い世代が興味・関心を持っているのは、
どうすれば楽に金儲けができるか。
・動画を観てもらえるだけで収益が入る。
じゃ、多くの人に観てもらえるような動画を作ろう!
ものづくり、表現方法の1つとして動画をつくるのではなく、「金儲けのために動画をつくる」のです。
楽して金が儲かるわけではなく、私も毎日のように動画を作っていますが、やはり、通常の労働と同じで、いろいろなことを考えて作っているのです。
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これからの「職業体験学習」は、
ただ働かせるだけではなく、倫理感もきちんと教える。
これに尽きますね。
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