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欧州・インド自由貿易協定の交渉期限迫る――数百万人の命が危機に






国境なき医師団(MSF)日本




欧州各地の活動団体が欧州議会前のフラッシュモブで有害条項の取り下げを要求
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 欧州委員会がインドに対し、4月中旬までの自由貿易協定(FTA)の調印を急ぐよう圧力を高めている。

 これを受けて、欧州各地の活動家・活動団体が2013年4月9日、ブリュッセルに集い、インドおよび世界の開発途上国で暮らす人びとの薬の入手を阻むことになる条項の取り下げを欧州委員会に求める抗議活動を行った。

 市民団体が漏洩文書から得た情報によると、欧州委員会は非公開の交渉で、公衆衛生を犠牲にした産業規制の強化を積極的に推し進め、何百万人もの命を脅かしている。

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 国際NGO「オックスファム」のレイラ・ボドー氏によると、「ここ最近、インドでは公衆衛生擁護的な複数の司法判断が下されていますが、欧州連合(EU)は現在、この“途上国の薬局”の店じまいと、欧州の製薬企業の利益を確実に保障することをいっそう強く望んでいるのです。途上国で使用されるHIV治療薬の80%以上がインド製です。EUが現行の協定案に含まれている有害条項を押し通せば、数百万人の命をつなぐ薬の供給網が断たれてしまいます」と事態の窮状を訴えている。


 公衆衛生擁護団体の圧力により、特許保護期間延長のような、薬の普及流通を阻む一部の条項は、既に協定案から外されている。しかし、知的財産関連の取り締まりと投資を規定する条項は、4月半ばまでという協定調印の期限が迫っているだけに、現在も大きな懸念事項となっている。

 カール・シリター欧州議会議員(緑の党)は、「これらの条項は世界で最も貧しい人びとの健康を損なうもので、協定調印の期限が刻一刻と迫っている現在、特に懸念を深めています。欧州委員会は薬の普及流通を推進し、途上国の人びとの命に配慮しているなどと主張する資格はありません。
 一方で、インドに知的財産関連の厳格な取り締まりを迫っているのですから。私が欧州議会に求めることは、大勢の命を脅かすことになる条項を否認した上での協定書への調印です」と、強い懸念を隠していない。

 抗議活動に参加した団体はオックスファム、MSFのほか、Stop AIDS Campaign、ヘルスアクションインターナショナル(HAI)欧州、アクトアップ・パリを含む。各団体のスタッフが、本件と関わりのある欧州議会議員とともに欧州議会前で抗議活動を行った。ぼろぼろの衣服や血のりのついたスーツといったゾンビの扮装で、欧州の通商交渉を揶揄した。


 「FTAの有害条項には模倣品・海賊版拡散防止条約(ACTA)に近いものもあります。ACTAは幸い、一般社会の監視の目が強まったことから、欧州議会で否決されました。ところが同様の規制案が息を吹き返したのです。実にしぶとい問題です」Stop AIDS Campaignのロティ・ラター氏はそう語る。


 取り締まり条項は、インドにおける薬剤の生産・輸入の障壁となる可能性がある。インド製の薬剤は途上国で暮らす数百万人の命綱だ。取り締まり条項により、多国籍企業の横暴に道が開かれ、薬剤の実用化の遅滞、差し止め、押収、破棄につながる恐れもある。


 投資関連条項は、インドの国内法や政策、司法判断その他の動向(普及流通を目的とした特定の薬剤の特許申請却下や無効化など)が多国籍企業の投資活動を阻害すると見なされた場合、同国政府が何十億ドルという賠償訴訟を起こされ、非公開の調停裁判が行われる根拠となり得る。

 さらにこれは、MSFのような治療を提供する第三者に適用される可能性もある。


 MSF必須医薬品キャンペーンのケイティ・アザーサッチは、「治療を提供する立場から、MSFはこれらの条項案が承認されてしまった場合の影響を懸念しています。世界各地の治療で用いている、適正価格で高品質の薬の入手を阻む障壁がいっそう強固になるだけでなく、ジェネリック薬を使用したというだけの理由で訴訟に巻き込まれる恐れもあるのです。欧州は公衆衛生を脅かす要求を、いずれの通商交渉からも全面的に撤回すべきです」と訴える。


 4月半ばまでに締結が見込まれる欧州・インドFTAは、アジアと欧州、そして1つの協定で多くを失う恐れのあるアフリカ大陸で、抗議の声を呼んでいる。


 今回のFTAは、EUが途上国に対し、知的財産関連の規制強化のために進めている一連の交渉の最近の例に過ぎない。欧州はインドのほか、東南アジア諸国連合(ASEAN)、マレーシア、ウクライナとも既にFTA交渉に入っており、今後、タイ、モロッコ、チュニジア、エジプトなどとの交渉も予定している。


 国際治療準備連合(ITPC)中東/北アフリカのオスマン・メルク氏は事態を非常に憂う一人であり「中東や北アフリカのHIV患者は、インドから輸入された抗レトロウイルス薬で治療を受けています。インド・欧州間で現行案のような協定が締結されれば、深刻な影響が生じ、これらの地域における必須医薬品の入手が阻まれるでしょう。欧州委員会には、製薬企業だけが利益にあずかり、途上国の人びとには悪影響を及ぼす通商政策を中止するよう求めます」とコメントした。

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 欧州・インドFTAは2007年に交渉開始。当初から、欧州委員会は、インドの比較的安価な薬剤の生産能力を衰退させる条項の盛り込みを推し進めてきた、インド製の薬剤は途上国の何百万人という人びとの頼みの綱だ。


 EU・インドFTAの有害条項について
「取締まり(エンフォースメント)」条項により、ひとたび特許権や商標権の侵害が指摘されれば、インドから、患者の待つ途上国へのジェネリック薬輸出が禁じられる恐れがある。さらに、ジェネリック薬を患者に提供したというだけの理由で、治療提供者が法廷闘争に巻き込まれる可能性もある。


 今回のFTAに含まれる「投資」関連条項は、インド政府が公共の利益のための保健衛生管理として、特許を無効化し、医薬品の普及を促そうとしたり、薬価を規制したりした場合、製薬企業に訴訟を起こされるリスクを高めることが予想される。その場合の係争は、インド国内の司法機関ではなく、非公開の調停機関の取り扱いとなり、多額の賠償が請求されるだろう。

 インド・欧州以外の国家間のFTAでは、投資関連条項に基づき、当該国政府を相手取った企業による訴訟が既に複数行われている。公衆衛生政策を覆そうというフィリップモリス社とウルグアイ政府の訴訟はその一例だ。製薬企業は、公衆衛生政策が、企業による投下資本と利益の「収用」につながると主張している。





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