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14000人の傍観者(フォロワー) ~日向市の裁判ではインターネットにおける情報発信の在り方が問われている(後編)~3







4 Kファイル裁判とインターネットにおける名誉毀損への対応

☆係争中でもツイッターで裁判長批判

ツイッターは情報発信者にとっては実に都合の良いツールである。

自分が訴えたいことだけを140文字にまとめて発信すればよいのであるから。

現在、係争中であり、被告の身であるKさんは、今でもツイッターで発言している。このこと自体、通常は考えられないことなのだが・・・


この「Kファイル」に関する裁判は、当初、日向製錬所とサンアイが別個に提訴した。

第1回口頭弁論の際、原告である日向製錬所が併合審理を希望する上申書が提出され受理された。第2回口頭弁論以降、併合審理となった。

その併合審理の上申書の中で、次のようなことが書かれている。


・頭書事件((株)日向製錬所)と上記事件((有)サンアイ)につきましては、被告が同一であるうえ、原告はグリーンサンドの製造会社と運搬会社であり、被告が同じSNSにより両社を中傷している事に対する差し止めと損害賠償の請求という点で事実が共通し関連性を有しております。

この文章では、原告側はこの裁判が「被告が同じSNSにより両社を中傷している事に対する差し止めと損害賠償の請求」であることを述べている。もちろん、併合審理を受理した裁判所もそのことは知っている。

さらに上申書は続く。

・また、争点につきましても、グリーンサンドの安全性の点や健康被害の原因となっているかという点で共通になるものと思われ、これに対する主張や証拠も同一のものになることが予想されます。
 
ここで問題が起きるのである。

Kさんは、「この裁判の争点はグリーンサンドの安全性や健康被害についてである」と認識し、ツイッターでもそのことを主張している。

しかし、実際、原告が請求しているのは「被告が同じSNSにより両社を中傷している事に対する差し止めと損害賠償の請求」である。その中で問題とされているのが、グリーンサンドの安全性や健康被害の件なのである。

これまでの裁判の中で、被告であるKさんは、原告が請求している誹謗中傷はや営業妨害に関して、準備書面や証拠資料を通じて一切反論していない。

ただ、Kさんが提出した別々の審理を希望する意見書で、Kさんは以下のように述べている。



・頭書事件の争点は、原告が「責任の取れない」というグリーンサンドを強引に積んでそのままにしているので、どう責任を取ってくれるのかということです。責任が取れないようなら、持って来た物を全部きれいに片付けるべきですが、その原因から原告側は争点を逸らし、被告のSNSによる中傷のせいだとしております。

・被告のSNSは中傷でなく、今まであった事をそのまま公表しています。「公表していい」と認めたのは、原告の常務取締役総務部長H氏です。原告はグリーンサンドの製造会社であり、(有)サンアイは購入運搬会社ということを原告会社から説明を受けております。 (有)サンアイの第一回口頭弁論迎えない時点で原告が「審理を併合する」ということを希望し、売買関係にある両社が「主張や証拠も同一になる」ということを言い切ること自体、おかしいと思われます。
よって、口頭弁論の併合ではなく、別々に審理した方がより正しく、平等に判決できると意見書を提出する次第です。 



Kさんによると、SNSに掲載したのは日向製錬所側が「公表してもよい」と認めたからであり、今まであったことをそのまま公表している、ということである。

しかし、説明にはなっていない。

Kさんが考えている誹謗中傷とは一体何なのだろうか。

Kさんのブログを見れば、その酷さは誰が見ても一目瞭然である。


公表していいと言われたから公表した、では、まるで子どもと同じである。


係争中で被告の身であるKさんが今も発言を続けているツイッターには、一切、名誉毀損や営業妨害のことは書かれていない。


逆に原告の側が67回にも及ぶKさんらの抗議行動について詳細に記録し、証拠資料として提出している。記録の中には、日向警察署が「不退去罪」を視野に入れて出動したことも書かれている。67回とはすごい数である。


また原告は、これまでの準備書面や証拠資料を通じて、争点となっている日向製錬所の製品である「グリーンサンド」の安全性について述べている。


健康被害に関しては、2015424日に行われた第4回口頭弁論で、被告から「診断書」というカタチで提出された。


病名は「マイコプラズマ肺炎」で、マイコプラズマという微生物によって引き起こされ、肺炎球菌による老人に特有な肺炎とは異なり、学校の寄宿生などの若い人たちの間で流行が観察される肺炎であることから、非定型肺炎(異型肺炎)とよばれている。

晩秋から早春にかけて罹患率が高く、罹患年齢は、幼児期,学童期,青年期が中心とされていることから、グリーンサンドが原因による咳ではないことは明らかである。

しかし被告は、今でもツイッターで子どもの咳についても取り上げている。


というか、係争中であり、被告の身でもあるKさんがツイッターで発言すること自体が異常であり、裏付けがとれていないことを発言することは軽率である。

しかも、ツイッター上で、裁判長の批判まで繰り返して行っているのである。

公判の前日にも関わらず・・・

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2015.7.14 03:05:45

あすは第六回口頭審理。ひとつも原告二企業から釈明してもらっていませんが塚原 裁判長は何を考えているのでしょうか。「どう考えていますか?」と質問しても「答えない」と言います。しかし明日は被告尋問の日。裁判官が被告に質問するそうですが答えなかった人に答える必要あるのかしら。
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さて・・・




☆SNSにおける差し止め請求

原告である日向製錬所およびサンアイは、この裁判で「SNSにより両社を中傷している事に対する差し止め」を請求している。

この裁判で言われているSNSとは、主にKさんが原告関係者に対してありのままを掲載しているブログのことだが、ツイッターでもかなり激しい発言を繰り返していることからすると、この2つが対象だと思われる。

原告は裁判を起こす前に一度、Kさんが開設しているブログの運営会社に対して、ブログの削除請求を行っているが、運営会社は応じていない。

その差し止め請求は、「Kさんのブログの記事の削除またはブログ自体の閉鎖」「ツイッターアカウントの凍結」になるのではないかと考える。

これらを裁判所が認め、実際に行われるにあたって登場する法律がある。



まずは、刑法。

 名誉毀損(刑法230条以下)は、公然と事実を摘示し、他人の名誉(他人に対する社会的評価)を著しく低下させる行為である。民事上は損害賠償の対象になり、刑事上は名誉毀損罪となり、3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金である。

 また、侮辱罪(刑法231条)は、事実を摘示しない、事実を示さない悪口で、公然と他人を侮辱した場合である。刑罰は、拘留または科料である。名誉毀損の内容によっては「信用毀損および業務妨害罪」(刑法233条)となることもある。

今回、原告は、被告であるKさんに対してブログ記事の差し止め、つまり、該当するブログ記事およびツイッター記事の削除を請求している。

このことから裁判所は、被告に対して自主的に該当するブログ記事を削除する旨の判決を出すことが予想される。

しかし、Kさんがそれに応じない場合も考えられる。

今回の被告はKさんであり、原告のブログ削除請求に応じなかったプロバイダではないが、プロバイダは過去に原告がブログの削除請求を出していることを知っている。



そうなれば、いわゆる「プロバイダ責任制限法」により、裁判所はプロバイダに対して、被告のブログを削除する命令を出すことができる。

プロバイダ責任制限法(特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律、平成131130日法律第137号、施行2002527日)では、情報の流通によって権利を侵害された者が出た場合、「①情報の流通によって、他人の権利が侵害されていることを知っていたとき」「②他人の権利が侵害されていることを知ることができたと認めるに足りる相当の理由があるとき」、プロバイダが損害賠償責任を負うとしている。


今回の件は上記の②に該当するものと思われ、裁判所の判決にKさんが従わない恐れがある場合、裁判所はプロバイダに対して、ブログの削除命令を出すのではないかと考える。



ツイッターも同様である。


ツイッターは手軽な情報発信であるがために、当然、ブログより発信回数が多くなり、それだけ情報が拡散され続けられる恐れがある。

これも裁判所は被告に対して、今後も原告への誹謗中傷を繰り返すのであればツイッターの利用を控えるようにと伝えるだろう。

しかし、公判前日まで、しかも裁判長にさえツイッターで批判するありさまであることを考えると、厳しい判決が出されるのではないだろうか。


ツイッターアカウントの凍結。


Kさんがおとなしく判決に従わずに裁判後もツイッターを使うようであれば、プロバイダ責任制限法によって裁判所がツイッター社に対してアカウント凍結の命令を出すことになるだろう。

しかし、ツイッターアカウントが凍結されても、別途アカウントを作成することはできる。

別の名前でアカウントを取得するのである。

当然だが、フォロワーはリセットされる。
これまでの14000人を超えるフォロワーを集めることは難しく、裁判が終わった以上、支援者による「Kさんに1万人のフォロワーを付けようプロジェクト」も行われないだろう。

しかし、発信者であるKさんはそんなことはお構いなしに、アカウントが凍結されては新しいアカウントで発言しと、イタチごっこの様相を呈することも考えられる。こうなればどうしようもない。暴走である。


要するに、今回の裁判の判決をKさん自身がきちんと受け入れることである。

裁判後、Kさんが今後一切、SNS上で誹謗中傷しないとすれば、今回の裁判で該当するブログ記事及びツイートを削除するだけで済むだろう。


あとは営業妨害にかかる損害賠償金となる。


こちらは裁判所の判断に任せたい。


外野が何と言おうと、すべてはKさん次第である。

2015年7月15日、宮崎地方裁判所延岡支部第1法廷で、被告に対する「本人尋問」が行われる。

それを受けて、裁判後のことを考えてみたい。




【出典・参考サイト】



削除弁護士(安保和幸法律事務所)






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~日向市の裁判ではインターネットにおける情報発信の在り方が問われている(後編)~4」では、「本人尋問」を受けて終結を迎える裁判後のことについて考えてみたいと思います。


5(完結)裁判後のこと

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