イエメンのアデンで国境なき医師団(MSF)が活動している外科病院の敷地内とその周囲で、2012年9月27日に発砲事件が起き、10月4日までに患者が避難した。
また、病院も閉鎖を余儀なくされた。アデンとサヌアの両市の担当局は、病院の安全な再開と医療スタッフおよび患者の保護に協力することを確約している。
◇MSF、行政・有力者に解決促す◇
MSFのプログラム・コーディネーターであるアンネ・ガレリャによると、9月27日の襲撃の際に2人の警備員が殴打され、銃で脅された。また、病院の敷地の内外で発砲があった 。患者には被害がなかったが、1人が負傷したため緊急処置をした。病院内は緊迫し、5時間にわたって外出できない状態が続いたという。
今回の病院襲撃は、医療活動の実施と安全を脅かす一連の出来事の延長線上にある。4月には、病院の医師が患者から深刻な脅迫を受けた。5月には、建物内に侵入した武装集団が患者の1人を拘束しようとし、6月には敷地の入り口で銃撃が起こった。
MSFは病院の安全確保に最大限の努力をしている。それにもかかわらず襲撃を受けたことで、具体的な再発防止策を、地元行政と有力者が緊急に講じる必要性が高まっている。
MSFの活動責任者であるトマス・バリベは「難しい状況になっています。病院では、人道主義の原則に基づき、社会的・政治的背景にかかわらず治療しています。アデン州だけでなくアビヤン州、ラヘジ州、アッダリ州から来た人びとや、治安部隊の職員も治療の対象です」と説明する。
アデンの病院はベッド数40床で、外科の救急医療を提供している。4月の開設以来、地雷や武器の被害を受けた500人以上が治療を受けた。MSFは活動先のすべての医療施設で、武器の持ち込みを禁止する厳格なルールを設けている。
▽ トマス・バリベの談話
病院とその周辺の非武装を徹底するために、地域社会と法執行機関の実効的な関与が必要な段階に来てしまいました。MSFは、サヌアとアデンの担当局高官に対し、原則的な取り決めについて再交渉を行う予定です。
担当局からも、遺憾の意を伝える電話がありました。できる限り早い病院再開に向け、行政の前向きな協力が期待できます。
宗教的指導者や地域の有力者との話し合いも進行中で、MSFの要望を伝えているところです。患者とスタッフの安全が保証できなければ、活動の継続はできません。
◇◇
MSFは行政と協力し、患者が一切の差別を受けず、また負傷や病気の原因にかかわらず、必要な治療を受けられる体制を確保することが必要だと考えている。また、現状の速やかな解決を待ち望んでいる。
イエメンでは1986年に活動を開始し、2007年からは継続的に活動している。アデン、アッダリ、アビヤン、アムラン、ハッジャの各州で外科をはじめとする医療活動を行っている。MSFのイエメンにおける活動は、いずれの国の政府からも助成を受けず、民間からの寄付のみを資金源にしている。
特定非営利活動法人 国境なき医師団(MSF)日本 発
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